時間内に解き終わるために何が必要?
- 雄基 深澤
- 2024年10月6日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年10月7日

「国語は時間が足りない」という声を昔からよく聞きます(特に共通試験)。それは文章の量が多いことが原因なのかもしれません。ただ、「文章量が多い!」と文句をつけても残念ながら入試問題の文章量は減りません。だからといって諦めるわけにもいかないでしょう(特に文系の人)。
そこで、どうすれば時間内に解き終わるのかを考え、実践していく必要があります。つまり、戦略・戦術視点を持って攻略していくということですね。
国語Labでは、傍線部に出くわした際に、解答の方向性をその場で見いだしていきます。
以下に一例を挙げます。
2024年度共通試験国語第一問より(全文や全設問はご自身で用意して見てください)
問2、傍線部A「これが典礼なのか、音楽なのかという問題は、実はかなり微妙である。」とあるが、筆者がそのように述べる理由として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
傍線部Aまでに書かれていた前提情報
①主語にあたる「これ」=モーツァルトの追悼ミサの中で行われたレクイエム
※追悼ミサ=故人を追悼するための宗教行事
※レクイエム=鎮魂歌、追悼のための曲
②ミサの途中で音楽隊がレクイエムを演奏していたということ。
前提情報をもとに、傍線部A「これが典礼なのか、音楽なのかという問題は、実はかなり微妙である。」を見ていくと、
「典礼である(つまり音楽でない) or 音楽である(つまり典礼ではない)」という二項対立的な発想でなさそうということが見えてくる。

どちらかではないと言われると、「では何なの?」と思いたくなるはずです。ここで、例えば以下のようなイメージを仮定するのです。
・パターン①=レクイエムは典礼にも音楽にも属す

・パターン②=レクイエムは典礼もしくは音楽のどちらかではあるが、もう片方の要素も持ち合わせている

傍線部Aに出会った際に、上記のような仮定を行って解答の方向性を見定めていきます。この方向性が自分の中にあると解答根拠となる箇所に出くわした時に自動的に「ここだ!」と特定できます。すると、設問の選択肢を見てどれを選べば良いのか迷うことがなくなります(ちなみに選択肢で迷うのが一番時間を喰うのです)。
こういった訓練をし続けると、時間内に終わらないという現状が徐々に減り、時間内に終わることが出来るようになります。
ちなみに、解答根拠となる箇所はどこかと言うと、以下の箇所。
これはほとんど音楽的なメディア・イヴェントと言っても過言ではないものになっているのだが、ここで非常におもしろいのは、典礼という宗教行事よりもモーツァルトの「音楽作品」に焦点をあてるという方向性を推し進めた結果、典礼の要素が背景に引くのではなくかえって、典礼をも巻き込む形で全体が「作品化」され、「鑑賞」の対象になるような状況が生じているということである。
端的に言うと、「レクイエム=音楽」だが、音楽が典礼を取り込む形になっている。つまり、パターン②の形式をしている。
これをもとに選択肢をみると、
①追悼ミサにおける《レクイエム》は、音楽として捉えることもできるが、それ以前に典礼の一部なのであり、典礼を体験することによって楽曲本来のあり方を正しく認識できるようにもなっているから。
②追悼ミサにおける《レクエイム》は、もともと典礼の一要素として理解されてはいたが、聖書の朗読や祈りの言葉等の儀式的な部分を取り去れば、独立した音楽として鑑賞と認識されてもいるから。
③追悼ミサにおける《レクイエム》は、典礼の一要素して演奏されたものではあったが、参列者のために儀式と演奏の空間を分けたことによって、聖堂内でありながら音楽として典礼から自立することになったから。
④追悼ミサにおける《レクイエム》は、典礼の一部として受容されてはいたが、演奏を聴くことを目的に参列する人やCDを購入する人が増えたことで、典礼が音楽の一部と見なされるようもなっていったから。
⑤追悼ミサにおける《レクイエム》は、典礼を構成する一要素であるが、その典礼から切り離して音楽として鑑賞することもでき、さらには典礼全体を一つのイヴェントとして鑑賞する事態も起きているから。
答えは⑤
⑤は、レクイエム=音楽であり、典礼をイヴェントとして鑑賞する(音楽鑑賞の一つになる)と書かれている。パターン②の図に一番合致する解答である。
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