国語の数学的な解き方
- 雄基 深澤
- 2024年7月7日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年8月2日

以下の文章を読んで設問を解いてください。
《本文》
私はスポーツ選手である。ただ、昔から意気地なしでちょっと不都合があると、「私は出来ない」「ダメなんだ」などとマイナスな思考ばかりをしていた。
あるとき私は大会で大怪我をした。リハビリ含めて全治2年というかなりの怪我だ。今まで経験したことのない大怪我であったので、私の心はすぐに荒み、「この怪我では私の選手生命は絶たれる。もうダメだ」などと日々救われない気持ちに囚われていた。
手術を終えてしばらくしたある日、私は母に「私は出来の悪い人物だし、リハビリも乗り越えられないかも」と弱音を吐いた。すると母は「神様は乗り越えられないものは用意しないよ」と言葉を返した。母は私が怪我をしてからいつも前向きな姿勢で接してくれていた。
これは気休め程度に思われるかもしれないが、なぜか私には心の安定をもたらすものであった。
これが救いとなり、私はプラス思考に切り替えることができた。
《設問》
下線部の内容を説明してください。
解答へのポイントは以下の3つ
『これ』に該当する箇所の特定をする
特定した該当箇所の具体的な中身を考える
直前の文の “これ” の内容を特定する
①『これ』に該当する箇所の特定をする
『これ』は指示語なので直前文のどこかを受けている。また、 “これが救いとなり” と書かれていることから、『これ』= “救い” である。
つまり、直前文且つ “救い” に関するところが該当箇所と考えられる。すると以下の箇所が該当箇所と判断できる。
【なぜか私には心の安定をもたらすものであった。】
『これ』に当たる箇所は特定できたが、設問は「内容を説明せよ」なので、指示語の特定だけでは説明したことにはならない。もう少し考えていく必要がある。
②特定した該当箇所の具体的な中身を考える
“心の安定をもたらすもの” とあるが、具体的には何が心の安定をもたらすものなのかをハッキリさせたい。
【これは気休め程度に思われるかもしれないが、なぜか私には心の安定をもたらすものであった。】
この文を手短にすると、“これは心の安定をもたらすものであった。” となる。つまり、 “心の安定をもたらすもの” = “これ” である。従って、“心の安定をもたらすもの” を具体化するには “これ” の該当箇所を特定する必要がある。
③直前の文の “これ” の内容を特定する
直前の文の “これ” が指しているものは、
「神様は乗り越えられないものは用意しないよ」と言葉を返した。
母は私が怪我をしてからいつも前向きな姿勢で接してくれていた。
の2つが考えられる。それぞれの可能性を以下で見ていく。
【1の場合】
“これは気休め程度に思われるかもしれないが” とあるが、マイナス思考ばかりをして救われない気持ちでいる人間が気持ちと正反対であるプラス思考の言葉をかられても気休めの言葉と捉えるのはありがちなので、 一般的には “神様は乗り越えられないものは用意しないよ” は気休め程度と思われるものである。
一方、“神様は乗り越えられないものは用意しないよ” が私にとっては “救い” となるかを検証すると、普段は救われない気持ちでいる状態の私からすれば、肉親である母からの言葉であれば一般的には気休めに見えても心に刺さる言葉になる可能性がある。そのため、“神様は乗り越えられないものは用意しないよ” は私に取っても “救い” の言葉になり得る。
以上より、 “これ” =『これ』=“神様は乗り越えられないものは用意しないよ” は問題なさそう。
【2の場合】
“母は私が怪我をしてからいつも前向きな姿勢で接してくれていた” は気休め程度になるかと言われると微妙なところだが、明らかにおかしいとまでは言えないのでOKとする。
また、普段は救われない気持ちでいる状態の私からすれば、一般的には気休め程度に見えても、肉親である母の姿勢なだけに心の安定に繋がる可能性は考慮できる。
一方、『これ』の後に “私はプラス思考に切り替えることが出来た” とあるが、 “母は私が怪我をしてからいつも前向きな姿勢で接してくれていた” = “これ” =『これ』とすると矛盾が生じる。というのも、私は怪我をしてから日々救われない気持ちでいて、母は私が怪我をしてからいつも前向きな姿勢でいる。母のいつも前向きな姿勢が救いになるなら、思考の切り替えは怪我の直後から出来ているはず。
以上より、2の場合は矛盾があるため不適。
①~③より『これ』の指すものは “神様は乗り越えられないものは用意しないよ” である。
結論が出たが、残念ながらまだ解答としては相応しくない。なぜならば、①でも述べたとおり、求められているのは「内容を説明せよ」であるからだ。『これ』の指すものは何か?ではない。となると、指すものを特定した上で、状況も踏まえて説明することが必要となる。
大怪我を負って救われない気持ちになっている私が母から「神様は乗り越えられないものは用意しないよ」という言葉を受けたこととすれば、問われていることに答えたことになるでしょう。
【解答】
大怪我を負って救われない気持ちになっている私が、母から「神様は乗り越えられないものは用意しないよ」という言葉を受けたこと
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